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「何なの?アンタ、怖いんだけど」 「私からしたらキミの方が怖いよ」 「記憶を失くすとか。漫画じゃねえんだよ」 「そうだよここは現実、でも実際にキミは私を忘れてる」 淡々と話し続けるその声に俺は少しだけ恐怖を感じた。 忘れてる?何を?いや、こんな事本当にあるのか? 病院に、いや担任に話をして、友達に連絡をして確認をーー現実的な解決方法は頭の中にどんどんと瞬時に浮かび上がっては来るのに、目の前のソイツの雰囲気がそうさせないとでも言うかのように、俺はその場から動かなくなっていた。 「混乱してる?大丈夫だよ、周りは誰も気付いていない。職員室に教室のカギを返してきてくれるかな、そうしたら一緒にゆっくり帰ろう、何処かでゆっくり話でもしようよ」 混乱する頭の中で女の声が耳の奥にまで響き渡る。 「カギ....、お前が返して来いよ」 「私は無理なの。ねえお願い」 彼女の手から強制的にカギを渡され、両手を握られる。 その手は驚くほど冷たくまるで長時間外で人を待っていたかのように凍えそうなくらいの体温だった。
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