27人が本棚に入れています
本棚に追加
いつもの通りのいつもの商店街に、新しいお菓子屋さんが出来た。
学校の帰り道、楓はこっそりと中を覗き込む。ケーキにクッキー、甘い匂いが外まで漂ってくる。
買って帰りたいなと思うけれど、 お小遣いは大事に使わなきゃ。
中学3年生の楓は今、受験勉強の真っ盛りだ。
甘いものは頭にもいいらしいのよ、と母はいつもどっさりお菓子を買っている。甘いものに不自由しているわけじゃなくて、ここのを食べてみたいだけ。
でも、やっぱりお小遣いは大切に。だって他に使いたいことがあるんだから。
いつもの通りのいつもの商店街の新しいお菓子屋さんは、最近とっても賑やかだ。
女の子たちがわんさと買いにやってきている。
そう、もうすぐバレンタインデー。
ケーキとクッキーと自家製チョコレートを売り出したお菓子屋さんは今が稼ぎ時。
色とりどりの包装紙にリボンも準備して、可愛いのからちょっと大人向けまで、さまざまな種類のチョコレートが店先を飾っている。
楓はいつも店の外からこっそり眺めて溜息をつく。
最初のコメントを投稿しよう!