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さっさと出て行ってくれれば、それで済むのに、何故。
ネコも怒ってんのかな?
よくも加奈子を殺しやがってって。
そうだよなぁ、ネコにしてみりゃ加奈子は餌をくれるはずの大事な人間だもんなぁ。
こんな寒い夜に加奈子を頼ってやって来たのに、俺のせいで餌にありつけないとか――……ははは、ざまぁみろじゃん!
俺だって腹減ってんだよ。
加奈子がいないと、俺なんにもできねーもん。
ってことはあれか。
俺、コイツと一緒かよ。
そんな事を考えていたら、猫と目が合った。
俺に焦点を合わせて、猫の瞳孔が大きくなるのが分かった。
やはり、猫は俺に怒っているのだろうと、俺は思った。
考えてみたら、すごいタイミングで現れたもんな……コイツ。
つーか、いつから見てた?
いつから見られてたんだ?
まさか、俺が加奈子の頭をぶっ叩くところから……?
コイツ、目撃者かよっ!
やべぇ、コイツが人間だったら、俺アウトだったわ。マジで。
見てたのがネコで助かったわ。
でも、そのネコのせいで何もできねーとか、クソだけど。
なんかコイツ、加奈子に近づかせないようにしてるみたいだし?
俺が加奈子をバラバラにしようとしてるって、バレてるとか?
ははは、何だそれ、オカルトかよ。
むしろ加奈子の仇を取りに来たとか?
加奈子の幽霊が乗り移ってるとか!
…………。
やべぇ、想像して鳥肌立ったわ。
だからネコなんてキライなんだよ! あーくそ、気分悪ぃ。
ありもしない妄想を巡らせているうちに、空が白んできた。
部屋の中にうっすらと朝の光が差し込んでくる。
いよいよ、手を打たないとマズい事になる。
「……やるか? やらねーと……」
俺が立ちあがるよりも先に、猫が起き上がった。
「なっ……んだよ。やんのか?」
こちらの様子を伺う猫の顔つきにただならぬものを感じて、足がすくむ。
まさか、本当に俺に仕返しをしようってわけじゃねぇよな?
そっちがその気なら、今度こそ容赦しねぇ。
加奈子と同じ目に合せてやる。
加奈子と同じ所に送ってやる。
2人仲良くバラシて埋めてやるよ!
心臓が痛いほどに拍動して、口からヒューヒューと息を吐き出していた。
猫がググゥッと前足を伸ばす。
ペロリと舌なめずりをして、ヤツはゆっくりと探るような仕草で、加奈子の頭部から首元へと近づいた。
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