第1話『ようこそ、自喰村へ』

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【自喰村(ジ グイ ムラ)】 T県S郡にはその昔、隠れキリシタンが住む村があった。その村では激しい高熱と筋肉の硬直が全身を襲い、終いには体を動かせなくなり死んでしまうこの土地特有の風土病が村人たちを苦しめていた。そこで村長はギリシャ語で「尾を飲み込む蛇」の意を持つウロボロスを用いた儀式を行った。 その儀式とは、自分の尾を飲み込む蛇ウロボロスのように、選ばれた人間が自分の身体の一部を喰らうことで村に降り掛かる厄災を沈めるというもの。太刀打ちできない村の危機に、「死と再生」「不老不死」などの象徴とされていた蛇が自らの身体を取り込むことで「完全になる」という祈りを込められたウロボロスの力を頼らざるを得なかったのだ。 村長によって選ばれた村人は、次々と自分の指や腕、臓器を差し出し、自ら焼き、食した。 すると、今までの疫病が嘘だったかのように収まり、村にはまた平穏な日々が戻ってくることになる。それから、この村では厄災が起こるたびに毎日“ウロボロス”となる人物を選択し、自分の肉体を28日間に渡って食べさせる儀式を続けた。 その経緯から、この村は“自らの肉体を喰らう村”、
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