第1話『ようこそ、自喰村へ』

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「ここから山を少し登ると、小さな村があってな。その村の民宿を取ってるんだ。貧乏サークルだからな、旅館は無理だったんだ」 岳はポリポリと後頭部を掻いた。 岳が部長を務める都内にある私立K大学の写真愛好会サークルは、岳を含めてここにいる5人だけの小さなサークルだった。サークルをまとめる大学の幹部会から降りてくる予算も年々減っていき、それとともに部員まで減っていったのだった。 高校時代から岳と知り合いだった悠斗は、初めは写真に興味はなかったものの、サークルが潰れてしまうと無理矢理参加させられたことによって、見事に写真に目覚めてしまったのだ。 悠斗、雪希、彰、祐香の4人は大学1年生で、大学3年生である岳と行く最後の冬の合宿だった。
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