第1話『ようこそ、自喰村へ』

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黒装束の男はその指を銀色のトングで掴むと、テーブルの上の鉄板プレートに乗せる。鉄板に敷かれた油の上で自分の中指がパチパチと音を立て、焼かれている。 不思議な光景だ。 1ヶ月前に行ったサークルの打ち上げで食べた焼肉を思い出す。 中指は、ちょうど鳥の手羽先のようなサイズ感と質感をしていた。 皮膚が茶黒く変色していく。 赤い断面も白くなり、中まで火が通ったことを教えてくれた。 見るからに外はパリパリ、中はふわふわになった絶妙な焼き加減で黒装束の男が再びトングで皿に移す。
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