第1話『ようこそ、自喰村へ』

8/38
前へ
/139ページ
次へ
『Y峠登山口前、Y峠登山口前です。お降りの際はお忘れ物などないよう、お気をつけください』 バスの扉が開くと冷たい風が入ってくる。 吉澤 悠斗(よしざわ ゆうと)は着ていたダウンジャケットのジッパーを上まで上げると、身震いをした。 悠斗たち以外誰もいなかったバスが遠くに消えていくのを見つめていた。 「寒いね、はいこれ」 そんな悠斗に、同い年の林 雪希(はやし ゆき)がバス停の横にあった自動販売機で買った缶コーヒーを悠斗の頬に当てた。綺麗なストレートの黒髪をチェック柄のマフラーの下にしまい込んだ彼女は自分の指先に、はあっと息を吐きかけた。
/139ページ

最初のコメントを投稿しよう!

122人が本棚に入れています
本棚に追加