7799人が本棚に入れています
本棚に追加
鞘に収まった状態で、端から端まで目を通す-- 眼光なんて形容は全く当て嵌まらない、むしろ眠そうな顔をしてる。
さっき剣を振り回していた時は、満面の笑顔だったのに。 こうまで性格が入れ替わるものかね。
「飾り細工はまぁまぁ…… 柄は実用重視…… この牛皮は自分で巻いた……?」
「持ち主が言うには、手に馴染むように改良してたらその形に行き着いたそうなんです」
「こういう味付けが好きなら、私はもっと上手くやる……」
「(小童がテキトーにカスタムしたのが気に入らねーんじゃね?)」
「(手汗で握り心地が変わらない世界を目指してたら、ああなったんだよ)」
「(つーかしれっと自分の持ち物じゃねぇみてーに言うなや)」
「(話が拗れるからこれで良いんだよ)」
男の俺がその剣をブンブン振り回している姿など、この子は想像もしていないだろう。
……雑な扱いをしているという自覚は、一応ある。
それもこれも、この剣が規格外の性能だからこそなのだが。
「いい剣だけど、使い込まれてあっちにもこっちもガタが来てる……」
「柄に牛皮を巻いた以外は、オリジナルの状態ですよ?」
「こんなに酷い状態じゃなかったはず……」
ううっ、そんな顔で言われると罪悪感が湧いて来るじゃないか。
外側を見ただけでここまで酷評なんだから、剣身を眺めたらどんな感想が出て来るんだろう?
シャラ……。
乾いた音を曳いて鞘から剣身が滑り出すと、彼女はさらに怪訝な顔になった。
顔を近付けたり遠ざけたり、姿見の鏡のように覗き込んでいる。
「……曇りすぎ」
「(ぎくぎくっ……!)」
「……研ぎが全然だめ」
「(嗚呼、オルレアン……!)」
「あちこち欠けてる……」
え? あちこち?
最初のコメントを投稿しよう!