匠の願いと優しい夢と

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   鞘に収まった状態で、端から端まで目を通す-- 眼光なんて形容は全く当て嵌まらない、むしろ眠そうな顔をしてる。  さっき剣を振り回していた時は、満面の笑顔だったのに。 こうまで性格が入れ替わるものかね。 「飾り細工はまぁまぁ…… 柄は実用重視…… この牛皮は自分で巻いた……?」 「持ち主が言うには、手に馴染むように改良してたらその形に行き着いたそうなんです」 「こういう味付けが好きなら、私はもっと上手くやる……」 「(小童がテキトーにカスタムしたのが気に入らねーんじゃね?)」 「(手汗で握り心地が変わらない世界を目指してたら、ああなったんだよ)」 「(つーかしれっと自分の持ち物じゃねぇみてーに言うなや)」 「(話が拗れるからこれで良いんだよ)」    男の俺がその剣をブンブン振り回している姿など、この子は想像もしていないだろう。  ……雑な扱いをしているという自覚は、一応ある。  それもこれも、この剣が規格外の性能だからこそなのだが。 「いい剣だけど、使い込まれてあっちにもこっちもガタが来てる……」 「柄に牛皮を巻いた以外は、オリジナルの状態ですよ?」 「こんなに酷い状態じゃなかったはず……」  ううっ、そんな顔で言われると罪悪感が湧いて来るじゃないか。  外側を見ただけでここまで酷評なんだから、剣身を眺めたらどんな感想が出て来るんだろう?  シャラ……。    乾いた音を曳いて鞘から剣身が滑り出すと、彼女はさらに怪訝な顔になった。  顔を近付けたり遠ざけたり、姿見の鏡のように覗き込んでいる。 「……曇りすぎ」 「(ぎくぎくっ……!)」 「……研ぎが全然だめ」 「(嗚呼、オルレアン……!)」 「あちこち欠けてる……」  え? あちこち?  
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