匠の願いと優しい夢と

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   手招きされるままに彼女の横に並んで、半分抜かれた剣の細部に目を懲らす。  うーん…… どこが悪いのか全く解らん。 「剣の中央、大きな欠けが一箇所……」 「そ、それはちゃんと見えてます-- その欠けを直したくてここまで来たんです」 「この周りに、小さな欠けが二十六箇所……」 「(えぇぇ!?)」 「(たはぁー)」  俺にはどう見ても綻びひとつ無い刃だが、彼女は次々と指で示してここがダメ、ここもダメだと言う。  おかしいな、最新の顕微鏡で調べてもそんな欠けなんか見えなかったのに。   「剣は凄く素性が良いのに、とても勿体ない…… 道具に頼ってると腕は悪くなるばかり……」 「も、持ち主に伝えておきますね」 「(持ち主はここに居んじゃねーや、バカじゃねーのテメー?)」 「(俺がこんな雑に剣を扱う奴だなんて思われたくないんだよ)」 「(それよか、腕が悪くなるって言葉のほーが効いてんじゃねーの?)」 「(ウグギギ……)」  自分の腕が最高で最強などと思ってはいないが、道具に頼ってると思われるのは癪だ、というかプライドが許さん。  と、胸を張っては見たものの、剣を全て引き抜いた彼女はさらに溜息を続けて、 「この子を使ってる人の性格が、何となく解ってきた……」 「ど、どんな性格なんでしょう?」 「適当で、大雑把で、お酒は蟒蛇で、大飯喰らいで……」  ははっ、俺にとっては全て誉め言葉じゃないか。 最後のは違う気がするけど。  しかし彼女にはそう受け止められていないようで、 「剣を持つ資格がないと思う…… こんな良い子を酷い目に遭わせるなんて、私が天罰を与えたいくらい……」 「(テメー、このガキに切り刻まれるんじゃね? 力負けしてたじゃねーか)」 「(まだ死にたくない)」  
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