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悲しみトリガー
ざらついた猫の舌のよう
乾いた風が喉にはりつく
伝えたかったはずの言葉
喉もと焦げて焼きついた
白灰は無数の砂粒のよう
はらはら無言で落ちゆく
受け止めようとしても掴めない
指の隙間から零れ地の果て沈む
そのうち僕は言葉を発することすら
忘れてしまうのだろうか
手が焼けるように熱い
せめて指先が溶けてなくなる前にと
トリガーに手をかけた
耳を切り裂く銃声
鼻をかすめる硝煙の匂い
薬莢に埋もれた膝はもう溶け始めていた
嗚呼、君にこの銃声が聴こえただろうか
弾はあとどれくらい残っている?
それぞれ持ち弾の数は違うらしい
天使の祝福とは比類なき無情
僕の左目からひとしずくの赤
君の右目からひとしずくの青
傷痕は目にうつらない
嗚呼、あなたもいつか気づくだろうか
悲鳴にも似た銃声のその叫びに
にくしみを撃つ悲しみトリガー
むなしさを撃つ悲しみトリガー
さみしさを撃つ悲しみトリガー
世界中のあちらこちら
トリガーは引かれ銃声は鳴り止まない
弾頭が蒼く震える悲しみを打ち砕くまで
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