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ユズキ「けっ、やっぱりお前らとは気が合わねぇ。……あばよ、まぁ、てめぇらはせいぜい綺麗にくたばれはいい」
(銃声)
雪「……あーあ。わたし、出来たらユズキに残って欲しかったな」
金糸雀「それは、自分以外でってこと」
雪「ううん。わたし、最初にいなくなる予定だったんだよ。アリエッタやユズキみたいな子はいなくなって欲しくなかったから」
金糸雀「ある種の憧憬、みたいな」
雪「そう。あの子達、今わたしがどれだけ寂しいかわからないんだろうね……」
(沈黙)
雪「まぁ、しょうがない。全て終わったことだ。終わってしまったことだ。そうだろう」
金糸雀「つまりあなたは死ぬと言うこと?」
雪「ん……どうするかな。金糸雀、あなたが一番全てにうんざりしてるって知ってるから」
金糸雀「おや、バレていたか」
雪「春の詩。夏の詩。秋の詩。冬の詩。風と雨と太陽、希望色の花、絶望色の空、青白いつま先……。つまりそういうものに飽きたんだろう?」
金糸雀「……そう。つまり、そういうこと」
雪「都合の良いさようならがもらえるって喜んだのは君だけだった」
金糸雀「詩人の命は短い。季節が美しく見えるうちに、花に希望が見えるうちに、空に絶望が見えるうちに、綺麗に歌えるうちに、死んだ方がいい」
雪「それが君の命の使い方って訳だ」
金糸雀「ああ、やはりユズキかアリエッタに残って欲しかった。うつくしい心だったのに。ああ、ああ、ああ!」
雪「わたしでは駄目だものね」
金糸雀「決して駄目という訳ではない。そういう訳ではない。ただ、そう、あなたにはほんの少しの同族嫌悪があるだけ」
雪「そのほんの少しが駄目なんでしょう。どれだけ綺麗な水でも、毒が一滴入ればその水は毒だよ」
金糸雀「いっそ毒だったら」
雪「きっとどちらかがいなくなってただろうけど」
(沈黙)
金糸雀「……雪、あなたはそんなことばかりで詰まらなくないのかい」
雪「そんなことばかり?」
金糸雀「あなたは時折未来が見えているような言い方をする。そしてその通りになる。詰まらなくは、ないのかい」
雪「……そうだね。言って、しまえば。とても詰まらない……」
金糸雀「ならば」
雪「でもしょうがない。わたしが残るなんて思っても見なかったけど。ほらね金糸雀、私の予想だって案外外れるもんだよ。こんなこともある」
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