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金糸雀「そう。そうかい。ならいいや。ここでさようならだ。最後の銃弾だ。最高じゃないか、最後の銃弾を使えるなんて」
雪「ふふ。そうかも」
金糸雀「この引き金を引けば全て終わる。最高に詩的じゃないか。はは、さようなら、みんな、雪。ありがとう、やさしい君たち。あなたの道に幸多きことを、うつくしく花咲くことを。僕は祈っているよ。春には、うつくしい花が咲く」
(銃声)
雪「……おい!いるんだろう」
(沈黙)
雪「――ねぇ、アリエッタ!」
(沈黙)
アリエッタ「やだぁ、どうしてバレたの」
雪「君ならきっと『こうする』って思ってたからね。これで私と君の二人っきりだ。満足かい」
アリエッタ「とっても満足よ。ああ、でもあなたが残るなんて、やぁね。これじゃあ不意打ちも出来ないし、手の内もバレているし。不満足。ええ、あたしはとっても不満足」
雪「ああ、本当にむしゃくしゃするな」
アリエッタ「なにが?」
雪「君はその声で喋るんじゃないってことだよ。アリエッタと同じ声で、君が喋るなんて!」
アリエッタ「だってあたしはアリエッタでアリエッタはあたしなの。なんて臆病でちっぽけなアリエッタ!アリエッタを補うのはこのあたしよ。そのアリエッタはもういない!あたしは自由よ!とびっきり惨めにあたしは自由!」
雪「君なんて……君なんて生まれてこなければ良かった……せめて先生が気付いてくれてたら」
アリエッタ「あんな馬鹿な医者にバレるはずないじゃないの。なにが銃と弾が一つずつよ。足りない。足りない足りない足りない足りない!あたしの分だけ足りない!」
雪「銃と弾を一つずつ。それで君はなにを終わらせたかったのか、言ってごらんよ」
アリエッタ「……あたしを、殺したかったのに!」
雪「……言ってごらん」
アリエッタ「あたしは、アリエッタを助けるために生まれたの。そうよね?あたしは知ってる。雪もユズキも金糸雀もアリエッタを助けるために生まれたの。みんなアリエッタのために生まれたの。でもあたしだけよ、こんなに意地が悪くて、嘘つきで、アリエッタと仲良く出来なかったのは。……あたしが一番要らない子よ」
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