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雪「みんな死んだ。つまりわたしはもう不要だよ」
アリエッタ「ゆき、」
雪「多重人格だなんて随分とおかしなことになってしまったことだ。アリエッタを守るためにみんな生まれたのに、そのアリエッタが一番最初にいなくなった。次にユズキ、次に金糸雀。みんな誰が最初かなんて、誰が元の人格なんて、そんなのわからないなんて言って、そんなことはなかった」
アリエッタ「……あの子が、最初、よね……?だって最初はあたしとあの子の二人っきりだったんだもの……」
雪「恐らくは。アリエッタが最初に死んだ。守るべき者がいなくなった。みんな死ぬべきだ。ねぇアリエッタ、もう一人のアリエッタにいない者として扱われたあなたが、次のアリエッタだよ」
アリエッタ「でも……でも、あたしになんて」
雪「ずっとみんなのことを見ていたのは君だけだよ、アリエッタ。それだけで充分だ」
アリエッタ「……」
雪「さようならだ、アリエッタ。あなたが今日からアリエッタだよ。この声で、この足で、この手で、生きるのはあなただ。大丈夫、わたしたちは死んだわけじゃないよ。同じ肉体の中に生まれたわたしたちなんだから、ずっとここにいるんだ。アリエッタ、泣くのはおやめ。あなたの生まれる日だ」
アリエッタ「雪ぃ……」
雪「あなたは何度もこの日を後悔するだろうね。でもその後悔を抱えることが出来るのは生きてる人間だけだよ。さあ、この引き金を引けばすべて終わる。アリエッタ、あなたの人生は、明るいよ。アリエッタ、あなたに命をあげる」
(銃声)
雪「――これ、が、最後の、銃弾だ」
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