猫が登場する物語

8/8
前へ
/8ページ
次へ
部屋を片付ける二人の男。 顔にはグルグルとタオルを巻き、ゴーグルをして、周辺の物をゴミとそうでないものとに分けて行く。 「写真は捨てるなよ」 「うっす」 男たちは、手際よく作業を続ける。 「この猫缶、何で開けてあるんですかね?猫なんかいなかったですよね?」 「さあな。昔飼ってたのかもな」 「腹減って食べたのかも知れないっすね、死ぬ前に」 「そうかもな。過酷な仕事でノイローゼだったらしい。一カ月欠勤が続いて、会社からアパートの大家に連絡が入って、開けてみたら…っていうよくあるパターンだ」 「でも、仏さん、笑顔で死んでたんでしょ?」 「ああ、そうらしいな。家族を交通事故で失って、その後は一人で都会暮らし。その挙げ句が過労死だ。何とも哀れなヤツだよ」 「わかった。最期に猫と遊んでたんですよ」 「そうかもな」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加