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私がこの力の強さを本気で知ったのは日高英樹を殺した時だ。
小学校六年生だった私は少しずつこの能力について疑問を抱き始めた。
早紀以外の人の率直な意見を聞きたいと思った私は、英樹に打ち明けることにした。
みんなからヒデの愛称で親しまれている彼はどんな話や相談も親身になって真剣に聞いてくれる人でいいアドバイスをしてくれると思ったし、同じ美術部だったので話しやすかったのだ。
しかし、だめだった。
放課後に私ができる限りの勇気を絞って自分の能力のことを告白し、実演(この時は植物を枯らした)したところ、彼はまるで怪物を見ているかのような目線で見てきて私を拒絶した。
ただ拒絶しただけならば冗談、手品上手いでしょ?
とでも言っておけば良かったかもしれない。
けれど彼はそのあと近くの電話で百十番をし始めて私から逃げようとしたのだ。
人を猛獣か怪獣かとでもいうような扱いに怒れた私が、なんでそんな目で見るの?と聞いたら、彼は怯えながら言ってきた。
「だ、だってお前、いつでも人殺せるじゃねえか。そんなやつ人間じゃねぇよ。」
その言葉は限界まで緊張していた私の心を抉り穿ち壊した。
心のどこかでは思いながらも必死で気が付かないふりをしていたことを一気に突いてきた。
そして、
そしてそして
その言葉は私が受け止めきるには破壊力が強すぎたのだ。
我を忘れた私は彼をビンタして家に帰った。
その時のことはあまり覚えてはいない。
記憶にあるのは叩いた一瞬のうちに何か生命力のようなものが私の体の中に入って来たことことだけ。
気がついたら私は家の布団にうずくまって泣いていた。
次の日の学校で、英樹の死を知った。
外傷は頬に叩かれた痕ぐらいしかなく、死因は心不全とされたらしい。
彼と最後に会っていたのが私であったということはどうやら誰にも知られなかったようで、私に疑いの目を向けてくる人はいなかった。
早紀以外は。
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