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「もう、ちゃんと聞いているの。もう摩耶怒っちゃうからね。人の話を聞かない人はいけないんだからね」
「はい、はい」
「ああー、『はい』は一度でしょ」
「そうだった。ごめん」
まったく母の完全コピーの叱り方だな。いつも摩耶がそうやって怒られているじゃないか。とは言え、小さな妹に叱られているなんて情けない。侑真は苦笑いを浮かべて頭を掻いた。
ここからは窺えないが、キッチンの片隅できっと母が笑いを堪えているのだろう。
そんなことより今回は何をみつけてきたのだろうか。きっと摩耶は冗談を言っているわけではないだろう。とんでもないものをよくみつけてくるのも事実だから、頭ごなしに嘘だと決めつけられない。他の家だったら、摩耶の話を聞いたら嘘はダメでしょなんて言葉が飛び出すのだろう。それくらい奇怪な光景の話をよく口にする。
自分だって人のことは言えない。普通に町中に歩いている幽霊を目撃してしまう。生きている人だと思っていたら、忽然と消え去るなんて現状を多々目撃してしまう。
霊感が強いっていうのは、木之内家の家系なのかもしれない。父も母も祖母も祖父までそうなのだから不思議な家だ。摩耶も例外じゃない。ただ、言っていることを理解することに時間がかかる。いつも慌てていて話が掴めない。
「いったい、猫の皮がどうしたっていうんだ」
「もう、だから猫がいっぱいなの。川なの」
理解に苦しむ。正解を導き出すにはそうとうな推理力が必要だ。頭の中で整理してみる。
『猫の皮』『猫がいっぱい』と摩耶の言葉を繰り返して考えを巡らせた。想像して思わずブルッと身体を震わせる。
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