7人が本棚に入れています
本棚に追加
猫の皮だけがたくさん道に落ちている映像が思い浮かび心臓が凍り付きそうになった。確かに、そうだとしたら大変どころではない。けど、そんなことってありえるだろうか。
ふと虐待との言葉が脳裏に浮かぶ。猟奇的な動物虐待ってことか。
そんな危険極まりない奴がこの町にいるってことか。まさか猫の霊がそのへんにうようよと溢れているわけじゃないだろうな。牙を光らせて襲いかかってくる化け猫の姿が浮かび、心臓がギュッとなり縮み上がる心地がした。
侑真はかぶりを振って自分の考えを否定した。考えても始まらない。行って確認した方が早いだろう。
「摩耶、その猫の皮のある場所に連れて行ってくれ」
「うん、いいよ」
摩耶は玄関に駆け出して、扉を開けて飛び出して行ってしまった。案の定、バタンと扉が鳴り響くように閉じた。静かに閉めるように何度も言っているというのに直らない。そのうち壊れてしまうんじゃないだろうか。そう思っていたら、扉がスッと開き隙間から摩耶の顔が覗き込み「ごめんなさい」と情けない顔を見せた。
わかっているなら、最初からやってくれればいいのに。笑って許してしまう自分も悪いのだろうけど。
侑真は「次はちゃんと扉を閉めような」と頭を撫でた。
「うん。じゃなくて、はい」
まったく仕方がないな。頬が緩んで地面に落ちてしまそうだ。
「それじゃ、行こうか」
小さな手を繋いで家を出ようとして振り返り、「母さん、摩耶とちょっと出掛けてくるから」と声をかけてゆっくり扉を閉めた。この玄関扉を開けて手を放してしまうと勢いよく閉まってしまう。どうやっても直らない。困ったものだ。けど、摩耶にはこの扉が重すぎるのかもしれないとも思えた。
「早く、早く、こっち、こっち」
摩耶が話していた場所は、家を出て次の十字路を曲がってすぐのところだった。
目に映る光景に言葉を失った。
最初のコメントを投稿しよう!