猫の川

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 猫の大群の流れに触れるか触れないかのところで、手にチクリとする痛みとともに痺れが肩のほうまでズズズと流れてきた。まるで電気が流れてでもいるようだ。これはかなりの霊力がありそうだ。  推測だが、この猫の大群の流れは現実世界とは違う。無理に入り込めば、おそらくあの世へ引っ張られてしまうに違いない。祖母はあの世へ旅立っていったのだろう。満面の笑みで手を振っていた。祖母とさようならするためにこの現象は現れたのだろうか。  そのとき、小さな女の子が猫の流れに紛れて通り過ぎて行こうとしていた。 「あああっ、玲花ちゃんだ。どこ行くの。待ってよ、摩耶も行く」  摩耶が脇を通り過ぎて猫の川へと飛び込んでしまった。  しまった。伸ばした手は摩耶の手を掠めて猫の大群の流れに乗って行く。 「摩耶。ダメだ、こっちへ来い。早く、早く」  ああ、なんてことだ。侑真の声も虚しく響くだけ。摩耶が猫の大群の流れに呑み込まれていってしまった。振り返ることもなく。  摩耶が、摩耶が死んでしまった。猫の川は死の川だ。そうに違いない。いや、そんなことはない。摩耶が死ぬはずがない。大丈夫だ、きっと。そんな想いとは裏腹に猫の流れが次から次へと目の前を通り過ぎて行く。こんなにもたくさんの猫があの世へ旅立っているのだろうか。  馬鹿な。そんなこと考えるんじゃない。摩耶が死ぬはずがないじゃないか。そんなことはさせない。絶対に、ダメだ。  摩耶を連れ戻さなくては。きっと、まだ間に合う。嘆いている暇なんてない。  意を決して侑真は摩耶を追って猫の川へ飛び込んだ。そのはずだったのだが、バチッと火花が散ったような衝撃が身体に走り猫の川から弾き飛ばされてしまった。気が付くとさっきいた場所の反対側に侑真は立っていた。  なぜだ。なぜ摩耶のようにこの流れに乗ることが出来ない。
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