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目が合うと怯んでしまう威圧感が化け猫にはあった。
衝撃が強過ぎたのか腰を抜かして立ち上がることも出来なくなってしまった。足腰に力が入らない。
まさか、あの猫の大群が合体したというのか。そんなことはない、たぶん。
バサリと再び箒のような尻尾で顔を撫でていく。化け猫は笑っているのか。馬鹿な、猫が笑うものか。けど、ほらニヤリと。
侑真はブルッと身体を震わせて生唾を呑み込んだ。
纏わりついてくる化け猫の尻尾。馬鹿にしているのかとも思える表情にイラッとくる。それでも尻尾は顔を撫でる。尻尾の毛が口の中に入り込み軽くえずいてしまった。
「おまえはこちらの世界の住人になった。行くぞ」
猫が、しゃべった。
これは本当に現実なのか。
動くこともままならなかったはずだった。それなのに、急に身体が軽くなっていることに気づいた。
あれ、浮いている。と思ったら、化け猫の尻尾で身体を巻き取られていた。
えっ、食べられてしまうのか。そんなことって。
「食べるわけがないだろう。連れて行くだけだ」
化け猫の背中に乗せられた。そう思った瞬間に景色が一変する。
花畑だ。
ここって。
侑真の頭の中にひとつだけある考えが浮かんだ。『天国』という文字だ。
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