第3章 前編

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――トン、トン、トン、トン 「誰かが階段を登ってきてる!」 「一旦出よう」 「うん!」  もし、一階にいる黒い奴が、こっちに向かってきているのであれば、一階は安全。だから、見取り図の通りに行くと、来た道を戻れば、あの音から遠ざけることができる。  そう考えた私は、べっこう飴片手に麗と共に理科室を出る。そして、足早に反対側の階段付近へと向かい、音の正体を探るように隠れる。見た感じ、どこかの探偵モノの張り込み調査にありそうだ。 ――タッ、タッ、タッ、タッ……  次第に音が大きくなっていき、2階に着くと同時に音は消えた。  私は息を殺し、そっと様子を覗う。すると、女子高生風の黒い影が、左手に包丁を持ちながらふらふらと周囲を彷徨いていた。  やっぱり。私は、彼に下に行くよと階段に指差して合図を送る。その後、甘い匂いの理科室にそいつが入っていったのを見計らい、足音を立てないよう、そっと行動を開始した。  
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