第3章 前編

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 今いる所から階段まで近いので、そこまで音を立てないよう、早歩きで向かう。そして、降りれば一階に辿り着く。ここでの安全圏と言ったら、今の所一階の保健室が一番だろう。しかし、その間にあいつにバレたら厄介になる。  私は頭の中で、冷静に考えながら、階段付近に着く。 「ここから、静かに降りるよ」 「了解」  小声でヒソヒソと言い合うと、互いに喋らないよう、手に持っていたべっこう飴を麗にも分け、すぐに口の中へと入れる。舐めてみると、懐かしい様な甘い味がした。  そして、しゃがんで手すりに掴まりながら、そっと一段、足を踏み入れた。この姿勢で降りるのはきついけど、無駄な音を立てずに済む。そう前向きに考え、慎重に降りていく。  そして、やっとのことで無事、一階に着いた。  ずっとしゃがみながら降り、尚かつ階段も地味に長かったせいか、足と腰がジンジンと痛む。彼も何だか痛そうに立ち上がって、腰を擦っていたが、笑顔は相変わらず絶やさない。本当に不思議な人だ。 「ふぅ」  一つ溜息をつく。これで普段、引きこもってばっかりで運動してないことが露骨に現れてしまい、正直恥ずかしい。 「きつかったね。でも、よくある潜入のシーンみたいで楽しかったよ!」 「え? そう?」  例えが余りにも大雑把過ぎる。私は半笑いしながらも体を元に戻しつつ、痛む腰に手を当てる。 「次は職員室か」 「そういえば、あの人から連絡来てる?」 「あっ!」  そういえば、あれからLIKEには教室で通知が来て以降、全く入ってなかった。 「もしかしたら……」  嫌な予感がしたけど、まずは行って安否確認をしてこない事には話が進まない。 「とりあえず、向かおう」 「そうだね。連絡くれた人、無事だといいね」 「うん」  不安な思いを抱え、急いで職員室へと向かった。
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