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何故か止血の方法が思い出せない。なので、すかさず彼に助けを求める。
「大丈夫。僕に任せて」
すると、私からバンダナを笑顔で受け取った彼は、三角にして器用に折り畳み始めた。
「え? いいの?」
そう聞くと彼は笑顔でコクリと頷き、慣れた手つきで彼女の体制を変えて止血を始めた。そのせいか、あっという間に傷口がバンダナに覆われ、血が流れてなかったのでひとまずホッとした。
「あとは、この人を連れて、保健室に向かうだけだね」
「そう、ね」
ボソリと呟くが、さっきから何故か、魂が抜かれたかの様に頭がボーッとする。
「望? 顔色、悪いよ」
「そんなこと、ない。私はこれでも平気だから」
「そう。でも、無理はしちゃ駄目だからね」
「はいはい」
それを見かねた麗が心配そうに訊いてきたが、私はそう冷たくあしらう。
でも、ここまで心配してくれるのは、内心嬉しかったけど、かなり照れ臭い。なので冷静を装って考える仕草をする。
「じゃ、保健室に運んどくね」
「ありがとう。あっ!」
ふと、何かを思い出した私は、おもむろに近くを探索し始めた。
「どうした?」
「ちょっと先、行ってて」
「え? 何で?」
バツ印のマスクを着けた少女を抱えながら、不安そうな顔で私を見つめている。
「この辺を少し調べてみるだけ。でも大丈夫。あとで合流するし、あいつが来たとしても、やられないよう、うまく隠れるから」
「んー、分かった。じゃ、先に行ってるね」
「うん」
彼は気乗りしてなかった様だが、少女を抱えたままの行動は難しいと思っていた様で、先に職員室を出て行った。
そして、私はこの場に残って調べることにした。
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