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都合のいい、体だけの関係。どちらかが気分が乗らなければ無理強いはしない。
そう決めていても、雪人はこれまで一度も本気で寿夫を拒んだことはなかった。もちろん、寿夫も雪人を大切にしたから、決して、ただの欲望のはけ口の相手として扱っていた訳ではなかったから、というのもある。
だが今夜は違う。
雪人は全力で暴れ寿夫を拒み、寿夫は力ずくで雪人を得ようとしている。
「いやだ! いやだ、福島っ!」
「なんでいやなんだ、言ってみろ! 言ってみろよ今宮!」
「だって、こんな……こんなのはいやだ……」
「こんなのってどんなのだ? 言えるか? 言えないだろ、どうせ……」
寿夫は解してもいない雪人の後ろにいきなり指を突っ込んだ。
「あぁうっ……」
雪人が悲痛な声を上げた。
雪人の身体の中で一番労わってやらなければならない、大事に扱ってやらなければならないところを乱暴に掻き回す。
「うう……ふく……しま……、やめ、やめて……い……いた……」
雪人が途切れ途切れに訴える声も耳に入らない。
雪人を想う気持ちも、ふたりの関係も、頭の中から完全に消し飛んで、寿夫は今欲望の塊になっている。
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