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――なにか都合の悪いことでも聞いたのか? そんな内容ではなかったと思うが。
「……今宮……。そ、そんなことより……その……」
「ああ、ちゃんと話すよ。話すつもりだったんだ。隠そうなんて思ってなかった」
「う、うん、わかってる。俺がひとりで取り乱して、お前に話すきっかけを与えてやらなかったのがいけないんだよな。本当にすまない」
ベッドサイドで頭を下げる寿夫に笑って見せた。
いつもの毅然とした態度を崩さないまま、それでもどこか苦しそうに、つらそうに、「どうしても相談に乗って欲しいことがある」と馨は言った。
自分が馨のような背景の人物の相談に乗れるとは思わなかったから、いったんは断った。馨は受け入れなかった。「君でなければダメだ」と言った。
どうしてもという切実な表情に、全身から漂う切羽詰まった様子に、少しでも力になれることがあるなら、と雪人は頷いたのだった。
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