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「花屋敷のプライバシーに関わる問題なんだ。絶対に誰にも口外しないと約束した」
「いや、あ……ん……。お前が義理堅くて口も固いってことは、よくわかってるつもりだけどな」
「たとえお前でもそれは破れない」
「わかってるって……」
「花屋敷は、俺にしか相談できなかったんだ。あいつの知りうる限り、そういう人間は俺しかいなかったんだよ。それで察してくれ……」
答えると、寿夫ははっと目を見開き、それから少し困ったような、どこかが痛むような表情をした。
しばらくして大きく頷いた。
時々早とちりで暴走することもあるが、寿夫は思いやりのある優しい男だ。雪人は寿夫が全てを呑み込んでくれたと確信した。
「なあ、俺が花屋敷とどうにかなったとか思ったのか?」
唐突な質問ではなかったと思う。それなのに寿夫は急にあたふたと慌て、ベッドサイドから離れて立ち上がりうろうろと歩き始めた。
「なあ、寿夫」
呼びかけるとびくりとして立ち止まった。おどおどとこちらを振り返る。
「怒ってないよ」
「ほ、ホントか今宮っ」
「ちょっと呆れてるけど……」
「いっ……」
近づいてこようとした足元がまた止まった。
「ヤキモチを焼いてくれた、と思っていいのか?」
「あ……い、いや……」
寿夫は立ったまま俯いた。
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