SNOW・HAPPY

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 タクシーを降り、ホテルのロビーへと入っていくふたりの姿を見ていても、寿夫にはまだ信じられなかった。  馨ほどの金持ちにもなれば、話をするのにもファミレスなどは利用しないのだ。静かなホテルのカフェで、香りの立つ高級な紅茶を優雅に飲みながら、洒落た会話を楽しむものなのだ。  ――洒落た会話? 今宮と?  渦巻く疑念をいちいち否定し、その否定をさらに否定し疑惑に囚われていく。  寿夫の頭の中は混沌とした。  馨がフロントで部屋の鍵を受け取り、雪人を伴いエレベーターに乗り込む姿を見ても、否定の否定のさらに否定を繰り返していた。  馨は洒落たカフェでも展望レストランでもなく、客室に雪人を連れ込んだ。普通に考えれば、話をするためだけではないことは歴然だ。  それでも否定したい。  違うと思いたい。  雪人に限ってそんなことはあり得ないと思いたい。  ふたりが乗り込んだエレベーターの前に立ち、ついに寿夫は真っ白になった。  真っ白になったままマンションに帰りついた。
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