真昼のクーデター

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競技場に一歩足を踏み入れると懐かしい ざわめきや歓声が聞こえてきた。杏奈は 大学のジャージを着てマネージャーとして 奔走していた頃の充実感を思い出した。 卒業してまだ一年と少しなのに、何故か もっとずっと前のように感じる。 それは生活が劇的に変化したからかも しれない。今の生活に不満を感じたり 後悔している訳ではない。メダリストを 根本で支えている自負もある。けれど、 何かが違う。はっきりとしたカタチに ならない違和感が彼女の心に巣食っていた。 杏奈はゴール地点近くの観客席に一人 座った。10000メートルは一周400 メートルのトラックを二十五周する。選手 同士の駆け引きも結果に影響する種目だ。
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