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とはいえ、そうは言っても今の私には職もなければ、胸を張れるような特技もない。
どうしたものかと悩んだものの、ふと目に入ったものは、最後に旅行した先で写した満開の梅の木の下で微笑む私と彼女のツーショット。
満面の笑みを浮かべて私の腕に自らの腕を絡ませている彼女の笑顔が眩しくて。
あぁ。
そうだ。
彼女と共に訪れ、共に感動を分かち合った思い出の場所を二人で生きた証として残そう。
単純にそう思っただけで、絵心も基礎も何もないところから、ただ、自分の思うがままに筆を取った。
それがたまたま知り合いの目に触れ、そして、おだてられるがままに出展した地元の小さな展覧会に出展することになり、あれよあれよという間に何故だか画家という道を歩み出したわけである。
幼い頃から勉強勉強。
数字に追われ、ひたすら真面目に生きてきた私からは縁遠い存在であった創造の世界。
これぞ、運命の転換期。
まさに、その歯車に上手くのっかったのだろう。
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