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「ねぇ、あなた。ご覧くださいな。タマとハチの仲のいいこと」
日増しに寒さが厳しくなる冬の午後。
暖かな日差しの中で、仲睦まじく体を寄せ合う愛猫二匹。
黒と白のぶち模様のハチに、茶トラのタマの背中がなんとも言えず愛くるしい。
だが、元々、母親を早くに亡くし、寡黙な父に「男は学歴で将来が決まる」と、厳しく育てられてきた私は昔から勉強勉強。
勉強づくめの毎日。
お陰で、感情の起伏は薄く、表情すらも乏しい。
彼女の言葉を受けて、私も何かしらうまい言葉を返したいのだが、「うむ」とひと言漏らすだけが精一杯だ。
そんな不器用な私の隣で、クスクスと鈴の音が鳴るような、心地よい笑い声を立てる彼女は多分。
いや、絶対に私の考えていることを全て見透かしている。
「なにがおかしい?」
つい照れ臭くて、ぶっきらぼうな声で聞く。
「いえね。あなたも私と同じことを思ってくださったのかと思うと嬉しくて」
チラリと横目で彼女を見ると、日溜まりのような笑顔を見せる横顔がやけに眩しくて。
私は思わず目をそらした。
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