シーン三、小当たり

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「つうか横から変な事言う、おみゃは誰だわさ?」  美妖女につかつかと威圧するよう胸を張って近寄る天。鼻頭に当たりそうな距離で指紋を見せつけてから指さす。変な訛りで小馬鹿にする事を忘れずに。  グルグルな指紋が葵に突きつけられる。  葵は冷たく手をはらう。 「大谷葵(おおたに あおい)よ。でも名前なんて覚えなくていいわ。だってこのままあんたとは永遠にお別れだからさ。パパさん、相手にするだけ時間の無駄よ」  素っ気なくきつい返しをされ怒り狂う天。  葵の頭をがっしと力強く掴んで人差し指をぐりぐりと目一杯鼻頭に押し付ける。対して彼女は無表情で無感動。むしろなにもなかったかのようなすがまま。意地からか、微動だにしない葵をじっくりと観察してみる。  突っ込みどころを探してやる。  ない脳みそで考える。  観察する。  髪の色は薄い青色でふるふわぼぶ。コオロギの触覚みたいな二本のアホ毛がトレードマーク。瞳も髪と同じ青。鼻は小さく口も小さい。しかしながら少女と言うには幼すぎる。つまり幼女。しかしながら年齢と容姿のアンバランスさがとても絶妙で美少女と表現してしまうにはいささか勿体ない。むしろ美幼女。いや、先ほども示したが美妖女か。とにかくそんな彼女の胸は当然まな板。背は低く色白。  もしかしたら……、そう思う天。  観察を続ける。  かのシャーロック・ホームズを思わせる鋭い目つきで。  服装はゆとりのある中袖の赤いシャツに青藍デニムのダボッとしたオーバーオール。胸の大きなポケットにはRock・Leeなるタグが縫い付けてある。足元は素足に黒を基調とした白い線が入っているスニーカー。元気な子供らしい格好だ。  やっぱり。
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