シーン四、ヒーロー

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「……信じられない」  ナニ平はまじまじと銃口をのぞき込んでいる。 「で、葵さんよ。なにがどう怪しいピラミッドパワーなんだって? 言ってみぃ。うりうり」  天が右目を閉じて右手の甲を下にして人差し指で葵を指さす。  勝ち誇ったようにふんぞり返りつつ。 「フ、フン……」  思惑を見透かされた葵が言葉を失っている。  チッと心の中で舌打ち。  悔しそうだ。  彼女の様子を見た天はそっぽを向いて邪悪な顔つきで笑う。目は半月をうつぶせにして口からは白い歯をこれ見よがしに覗かせ三日月が寝たよう。邪(よこしま)。今の天にピッタリの言葉。……弾丸を銃口に戻すくらいだったらなんとか出来る。けど、さすがに飛んでくる弾丸を止めるだけのスペックは持ってましぇん。  すぅみぃましぇんが。  へへへ。黙ってくれてラッキーと。  そう。  葵が言ったピラミッドパワーとはまさに天の手品を見越して言っていたのだ。  そして弾丸が落ちたのはすなわち手品であった。葵はきっちりと見抜いてみせたのだ。しかしながら弾丸を蹴り銃口に収めるというロナウドも真っ青な荒技を魅せ付け葵を閉口させた天に軍配が上がった。天が使った手品をここで敢えて解説する必要もない。むしろ目の前で起こった天が行なった荒技のファンタスティックさに驚くべきだろう。  …――無論、ソレこそが韋駄天足が成せる技なのだが。  ともかく一本毛がまぶしいナニ平は天の能力に素直に感心したようだ。銃を降ろし天を見つめてから決心したように言葉を紡ぎ出す。 「本当にただの子供じゃないようですね。下手な大人より頼りになりそうだ」
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