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「へっ? そうじゃなくて……」
両目をつむる天。
「クククッ。絵になる男、葦田天様はただのガキじゃねえぜ。いいだろう。教えてやんぜ。あんた、拳銃を持ってるかい。拳銃だ。持ってるなら出せ」
「いやいや、そうじゃなくて、僕の話を……」
「違うだと。そうかッ!」
天がなにかに気づいたように片目を開けてから、ふんぞり返る。
「分かったぜ。そういう事か。早く言えよ」
聞いてもらえると安堵する依頼人。
思いを吐き始める。
「今言おうとしたんですが……」
「そうだ、俺はイケメンだ。しかも絶世の美少年。嗚呼、格好良すぎて自分が怖い」
怖いな、ある意味。
と、天と依頼人の間に気まずく寒い空気がどろどろと流れ込む。
亜空間。
いわゆる不思議時空。色即是空。
「あ、あの。チャック開いてますよ。全開です。それはもう清々しい位に……」
途端、石になる天。
固まって張り付いた顔が湯気を上げて真っ赤になる。
「ば、馬鹿。早く言えっての。……そそ、そうだな。俺は格好悪い事はしない」
慌ててチャックを締めて誤魔化す天。
格好悪すぎる。
「……格好悪い事はしないですか。大丈夫かな、この人」
と依頼人が呆れ気味に言った。
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