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依頼人を改めてまじまじと観察する。
頭に毛が一本。
誇りらしきソレは夜風に揺れてとても気持ちよさそうだ。決して抜けないと胸を張っている。服装は白く無地なラクダシャツに腹巻き。パンツはベージュのステテコを合わせて首からは赤い吉凶神社の金運祈願御守りを下げている。足元もベージュの足袋で青い鼻緒の草履。どこからどうみてもベタベタなおっさん。
ステレオタイプなおっさん。
ふて腐れた寅さん。
背格好もおっさん。丸顔で背が低く小太り体型。とても平和そうな雰囲気を醸し出している。密かに天が付けたあだ名はナニ平。全身黒ずくめでモード・カラスな天とは対照的にとても凡庸。いや、むしろ凡庸すぎて逆に個性的なのかもしれない。
で、なに用だ、ナニ平と天。
「仕事を依頼する前に確認したいんですが、いいですか?」
対して渋い表情を浮かべて不安げなナニ平。
「もしかして……」
「ああ、そうです。君が格好悪い仕事をしないように僕も信頼できる人にしか仕事を依頼したくない。だから聞きたい。君は僕の信頼を得るだけの人間なんですか?」
「ああ。それな。てっきりイケメン的な話かと思った」
またソレか、しつこいですよ。
と睨むナニ平。
真面目にやって下さいと言わぬがばかり。
「僕にはどうも君が僕の信頼を得るだけに値する人間には見えない」
腹巻きから拳銃を取り出す。
「先ほど君は僕に拳銃を持っているかと聞かれていましたね。裏の運びを依頼する私とて裏で生きる人間です。身を守る為に拳銃を持っていても不思議はないでしょ?」
ほう、便利だな。
ナニ平のその腹巻き、四次元ナニソレ?
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