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天の思考を読んだのか、ナニ平がまた鋭い目つきで睨んでくる。
慌てて真面目になる天。
「ああ。だから敢えて拳銃を持っているかと聞いたんだ」
「で、拳銃を出してなにをするんです。まさか君を狙って撃てとか言い出しませんよね」
意味が分からないとナニ平がこぼす。
まるで吐き捨てるよう。
目一杯、これでもかと間を溜めてから答える天。
「正解ッ!」
「ば、馬鹿な。偽物じゃないんですよ。本物の銃なんですよ」
天の口角が不敵に上がってから答える。
「当たり前だろう。偽物なんか見せやがったらぶっとばす。本物だからこそ俺の実力が分かるってもんだぜ。グダグダ言ってないでさっさと俺を狙って撃て」
戸惑うナニ平。
それでも笑みを崩さない天。
遂に観念したように苦虫を噛み潰しナニ平が拳銃を構える。
「ケガをしても知りませんよ」
と一言。
また遠くから船舶の汽笛が二人の耳に届く。汽笛と同時に鈍い唸り声を上げるナニ平の銃。まるで推し量ったようなタイミングで発砲された。無論、当たらないよう足元の外した位置へと撃つ。いわゆる威嚇射撃だ。張り詰めていた辺りの空気が銃から発せられた金属音にて霧散されたようにも感じる。
当たらないよう祈り、固く目を閉じたナニ平の右目がゆっくりと開く。
南無三と……。
目を開けたナニ平は安堵で大きなため息を吐く。
良かった。彼にケガはないようだと。
「ククク。見ろよ。そこだ」
天が相変わらずの不敵に笑み、なんの変哲もない地面を指さす。
視線を移すナニ平。
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