箱庭

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 小学校からの帰り道、いつものように僕は近道をした。この辺で一番大きな公園を突っ切るのだ。普通に通学路を通るより、十五分は早く家に着く。「登校班破りは駄目だ」と大人は言うけれど、何が楽しくてわざわざ遠回りしなきゃならないんだ。そんなことに時間を使うより、早く帰ってさっさと宿題を終わらせて、友達と遊びたかった。だから僕は、二年生の時から四年生になった今日まで、この近道を使い続けている。  公園では色々な人たちと出会う。ジョギングするおじいさん、オカリナを吹くおばあさん、犬の散歩するおばさん、くたびれスーツのおじさん。でも、この日見かけた男の人は、今まで見かけた人たちとは違う、言葉にはできないけれど、妙な雰囲気を持っていた。 「私たちは、箱庭の中で生きている」  その人は、ベンチの上に立って何やら喚き立てていた。よく通る、大きな声だった。 僕は何となく立ち止まって、しばらく彼の言葉に耳を傾けていた。といっても、「外の世界」とか、「神の視点」とか、あの人の言っていることはよく分かっていないのだけれど。   「君たちの行いは、箱庭の主によって管理されている」  男の人がまた叫んだ。僕はふと疑問に思う。「君たち」ってどういうことだろう。彼は違うということだろうか。一体、僕らと彼とでは何が違うっていうんだろう。  変なところで、好奇心が首を持ち上げた。気付けば体は勝手に動いていた。僕は授業中、先生に質問するみたいに手を上げて、その人に尋ねた。
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