第二部 第四章

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 私は何も言えず、ただ寝転んだままの姿勢でいた。  自分の行動を振り返り、冷静に見つめる。いうなれば、反省。  物事が上手くいかないとき、事実をごまかしたり、何も考えずに欲望のまま行動したり、他人に感情をぶつけるだけがすべてではない。  感情をできるだけ排除し、自分の行いをひたすら冷静に見る。  冷静になればなるほど、悪い点しか見えてこない。だが、それこそが重要であるのだという。  冷静になり自分を悪く思い込んでしまうことが、実は価値を見出そうとすることと同等なのだと。ロピはそう伝えたいのだ。  「そのことをあいつは教えてくれた」    ロピはそう言うと、屋敷の方へと視線をやった。  あいつ……ミクは屋敷の向こう側でどうしているだろうか?   賢い彼女のことだ。むやみやたらに行動を起こしてはいないだろう。  しかし、彼女の負傷の程度はなんとしても知りたい。    突如、ミクの顔が浮かぶ。    にこりと微笑むと頬が膨らみ、やさしくふっくらとした丸型に近くなる顔。美貌という言葉とは程遠いかもしれないが、人を思いやる気持ちは人一倍だった。私のミスにより彼女の姿を消してしまったとき、私は大きく後悔した。今の私は彼女の無事を願っている。    だが、戦いにおもむくのはもうたくさんだ。    思えば、なぜ私はあの球体達と戦うことを選んだのだろうか?   なぜ、逃げることを押し通さなかったのだろうか?   ミクを助けたいと思ったから? 教え子の成長を望んだから?     違うと断言できる。私はその部分を明確にしなかった。だが、今は分かる気がする。私が戦いを選択した理由が。    私は恐れていた。    何を?    逃走することを。敗北、撤退。私が動揺をおぼえる言葉である。  私は逃走することによる不利益を嫌というほど知っていた。  だが、戦闘により教え子が傷つき、責任を負わされることも怖かった。  その揺れの最中、他の三人が戦いを強く願ったから、私は流されるようにそれを選んだ。  私は、私の意志で戦いを選んだわけではないのだ。  正確に表現するならば、その場の流れにのっただけだった。  逃走による不利益や教え子が傷つくことを恐れると共に、私は自分の選択が惨事をもたらすことも恐れていたのだ。あの時、無意識のうちに選択することから逃げていたのだ。
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