12人が本棚に入れています
本棚に追加
/673ページ
第一部 第一章
Prologue
1
世界の果てという場所があるならば、このような場所のことを言うのだろう。
だが、ここは誰も到達したことのない大地の端でなければ、光もとどかない地底でもなく、また雲の上に浮かぶ大国でもない。
ここは森だ。
大抵の人が安易に想像できるそれと何ら変わりはないと思う。
ただし、あることを除いたら。
漆黒の闇が支配する夜の森。足元に転がっているランタンの明かりが、辺りの光景を鮮明に映し出した。
今、俺の目に飛び込んでくるのは赤い液体、ちぎれた布切れ、冷たい肉。
それらは人間を構成していたものたち。
ここは生と死の境界が曖昧な場所。自分の認知している世界が、終わりを告げようとしている場所。
つまり、ここは俺にとって世界の果てだった。
最初のコメントを投稿しよう!