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面倒な仕事だ。レネをつれて帰ったらじいさんに、別に報酬を要求してやる。
契約外の報酬を依頼主に要求する行為はノアの規則違反にあたる。が、そんなこと知ったことか。
それともう一つの顔が、脳裏に浮かんだ。
「あとはミクのやろうだ」
あいつがレネを止めていればこんな面倒なことにはならなかったはずだ。
きっと、昨日の夜にレネにそそのかされたのだろうな。
ミクは単純だから直情的に行動したのだろう。
きっと、レネのために何かしてやりたいと考え、一緒に山に行くことを承諾した。
まぁ、確かに普通の人に比べたら、冒険というものを知っているかもしれない。レネの願いを聞き入れたことも分からないでもない。
しかし、奴一人で一体何が出来るのだろうか?
何も考えない行動が、どれだけ他人に迷惑をかけているのか想像できているのだろうか?
俺は怒りを鎮めるために、今度はミクの無惨な姿を想像した。
ミクのやつ帰ったら、どうなるかわかっているのか?
迂回コース二合目の標識を後にし、より空へ近づいたとき辺りの空気は一変した。
山の中ほどにも達していない標高三百メートルという高さではあるが空気はより一層澄み、時折吹く風に波打つ木々のざわめきは耳にやさしく響いた。
ふと足を止め、空に視線を投げる。濃い霧の集合体のような雲が、煙のようになびいている。
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