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俺はビンを目の高さまで持ち上げ、もう一度よく観察した。
だが、何度見ても空っぽのビンだ。それとも、人間の目では見えないものが入っているのか?
または気体でも入っているのだろうか?
いや、でもそうだとしたら、ビンの口を割って中のものを取り出そうとしたら、その瞬間に中身が消えてしまう。
特別な取り出し方があるのだろうか?
「マリ? これをくれた人は、中身について何か言っていたのか?」
「うーん。価値のあるものとしか言っていなかったような……あぁ、それと、私がどうしようもないくらいに困ったときに、これを使えって言ってた。決して、それ以外で使ってはいけないって」
「困ったときってどんなときだ?」
「さぁ? 私達にはまだ必要ないからね。それに使い方も分からないしね。こんなもの。でも、ロピならお金に換えることができるんじゃないの……ああ! もしかして、今私これを使っているのかな? 困難を冒険者に依頼することによって、解決しようとしているのかな?」
どこかすっきりとしないものがあったが、貰っておいて損は無い。大きなものでもないからな。
町に戻って、鑑定士の所に持っていけば何か分かるかもしれない。まぁ、本当に価値があるものだったら、
運がよかったということでいいだろう。
俺の顔からいつの間にか笑みがこぼれていた。
「そうか、ありがとう。貰っておくよ。しかし、一体誰がこんなものをくれたんだ」
俺はバックの中にそのビンをしまうと、視線を沼へと移した。
「それはねぇ」
マリが、そういいかけた時、俺は沼を隔てた向こう側で起こった変化を捉えた。
小さな光。それとほぼ同時に耳をつんざくような大きな音は、湖の水面をざわつかせる。
それは魔法具によるものではない。
あまりに予想外のものだった。
銃声だ。
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