第二部 第四章

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 彼らは指導前からとてつもなく大きな能力を身につけていた。  彼らは私の指導を受けなくても大きな功績を残すことができただろう。  結局、私はインストラクターとしての能力も不十分だったのだ。    それを裏付けるように、私の低迷はとにかく早かった。  希望者が少ないなと思ったときには遅かった。  私は冒険者の頃たどった落ちぶれ方を、見事なまでに再現していた。  冒険者の頃の末期と、近年の私の状況は似ていた。  仕事も途切れがちで、ノアからは能力を疑問視され、他のインストラクターからは蔑まれている。    三日後の会議で昇進が告げられるなどと言ってみたが、とんでもない。  会議に私が呼び出されたのは、私に対する厳重注意、最悪の場合、左遷か降格を告げるためだろう。  だから、私は会議に遅れることを何よりも恐れている。  これ以上、上の人間に悪い印象を与えてはまずいからだ。  だが、それももうどうでもいい。左遷や降格が怖くないのではない。  私は、すでにすべてを失っていた。  今、この瞬間、そのことを完全に理解できた。  数年前までは、偶然でも優秀な冒険者を世に送り出したという誇りが、かろうじて私を支えてくれていた。  だが、日々受講の希望者が減っていき、周りから軽蔑の眼差しで見られ、屈辱的なあだ名をつけられていることを知ると、その誇りは砂のように散っていった。  まだ大丈夫、まだ大丈夫だと思っていた。しかし、とうの昔に終わっていたのだ。    もう何もしたくなかった。何もかもが面倒だった。何をしても無駄のような気がする。    自分が特別器用な人間でないことは、何十年も前から分かっていた。  だから、謙虚にまじめにやろうとした。それなのに上手くいかない。誰かに協力してもらいたかった。助けてもらいたかった。  積極的に行動を起こしたこともあった。  けど、相手より自分の方が上だと思ってしまうと、なぜか残念な気持ちになる。  裏切られた気分になり、冷たく接してしまう。  それでは相手にされるはずがない。私はみずから機会をぶちこわしていたのだ。  
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