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どう行動しようが、私は救われない。
すべてがどうでもよくなった。
私が死のうが助かろうがどうでもいいことのように思えた。彼らがどのような選択をしようが、どうでもいいように思えた。
私は彼らにそのことを伝えなければならなかった。
私がそのことを伝えたら、彼らはどんな顔をするのだろうか? 悲しむだろうか? 私を蔑むだろうか?
それを想像することも面倒に思えた。
彼らが私をどう思うがどうでもいいと思うようになっていた。本当の意味での敗北だった。
もう、好きにすればいい。私がそう口を開こうとした瞬間だった。
「逃げてばかりだといつかは逃げ道を失う。挑まなくてはならない戦いは誰にでもある……とか。いつもは負けてばかりだけど、負けてはいけない戦いはある……とか。過去にこだわっても意味がない。未来において、自分の価値を高めればよい……とか」
この場に似つかわしくない晴れた声に、私の胸は高鳴った。
ロピだった。
ロピが照れくさい笑いをうかべて私を見た。
彼のまなざしはやさしかった。意図の分からない言葉に、私は口を半分開けたまま彼を見つめた。
私だけではなくラッドとクルーシェルも黙ってロピの言葉を待っている。
彼らの沈黙は、ロピの言葉に対する戸惑いやちゅうちょではない。なんらかの期待を含んだ沈黙のように私には感じられた。
「後悔はしたくない。そのためには自分らしく生きればよい……とか。そんなのは必ずしも当てはまらない。長いものに巻かれて、流されてもいい。自分の嫌な部分をごまかして、逃げるだけ逃げてもいい。負けるべきでない戦いで負けてもいいし、過去にこだわっていじけていてもいいのではないかと思います」
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