第二部 第四章

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 あなたは誰も信用していない。  ある冒険者の言葉が脳裏に浮かんだ。  誰も……すなわち私は、自分すら信用していないと言いたかったのだろう。  今になって、その意味が十分に理解できた。  自分を偽り、言い訳ばかり言っている人間が、自分を信用できるはずがない。  仕方がない事なのだ。私は自分を信用できない。  それゆえ、私は他人を信用せず、他人は私を信用しない。その結果、物事が都合の悪い方法に向かっていく。  だが、それにはどうすることのできない理由があるのだ。私は自分を信用できないのだから。  そのようなリングが私の中で構築されていた。そのリングの中にいれば、私は楽になれる。    ふと、思った。    失敗してしまったとき言い訳を見つけようとするのは、人間として正常な行いなのではないのか?   誰もがそうなのではないのか? 暑い日に体温調節のため、汗をかくのと同じくらい当たり前の機能なのではないのか?     だから、我々は何度も同じ失敗を繰り返す。失敗したことに適当な理由をつけてごまかす。    何も学ばない。過去にたくさんの愚かしい出来事が存在した。争い、奪い合い、殺し合い。  現在においてもなくならない。  時代が流れ、あらゆる役割が我々の世代からラッドやクルーシェルの世代に移り変わっても、不幸は増えていくばかり。  争い事は激しさを増す。魔力汚染をとめられず、世界に害獣があふれる。  他人の迷惑を顧みずに魔法兵器を作ったり、無許可の魔法実験を行う人間が増えていく。  我々に言い訳という防衛機能が備え付けられている限り、避けられないことなのだろうか?   すべてが仕方がなかったとして片付けられるのだろうか?    いや、それも違うのかもしれない。
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