第一章――――狩猟

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「おう遅かったな……って……なんだ、お前っ!?」  正面奥のキッチンにいた口髭が驚いてテーブルから立ち上がる。右手側の壁近くには三人の男が座っていて、全員ギョッとしたような表情でナツメのほうを見ていた。メイド服を着た侵入者によって、仲間の一人が口内に銃を突っ込まれているとなれば驚愕しないわけがない。  ナツメは銃を構えたまま、瞬時に部屋の状況を確認する。  キッチンのテーブルにはコルト・ガバメントが一丁――口髭が手を伸ばせばすぐに届く位置。右の三人も銃を持っている可能性はある。とりあえず、この部屋には他に誰かが隠れている気配はない。口髭との距離は約四メートル、十度右にずれた位置。右の三人は三メートル半、右に七十度というところ――。 「クソッ!」  口髭がテーブルの銃に飛びつく――それを予測していたようにナツメは銃を長髪の口に突っ込んだまま口髭の方向へ向け、引き金を引いた。  耳をつんざく発砲音。  長髪の左頬を貫通して発射された弾丸は、銃を手に取ろうとしていた口髭の左側頭部へ撃ち込まれる。  長髪が火傷と銃弾貫通の激痛から悲鳴を上げるのと、口髭の身体が崩れ落ちるのはほぼ同時だった。  右の三人のうち、一人が中腰になってズボンの腰元に挟んでいた銃を抜こうとする。しかしナツメはそれより速く――銃を男の口から引き抜いて、三人の頭部を連続かつ正確に撃ち抜いた。壁に三つ、血の花が咲く。
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