第二章――――銃声

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「天城が盗んだ三千万を入れたトランクケースなのですが、天城はどこか別の場所に隠していたのではないでしょうか。実際、天城のヤサ内で金は見つかりませんでした。秋水はその隠し場所を聞き出す前に天城を殺してしまい、金を見つけることができなかった。天城が独断で行ったこととはいえ、三千万を失った責任は秋水にも及びます。その責任払いを恐れて、秋水は行方を眩ませているのかもしれません」 「ふーん……なるほどね。でも俺、もう一つ可能性思いついちゃった」  ナツメは「にひひ」と笑って人差し指を立てる。 「秋水ってやつはさ、金に目が眩んだんだよ。死んだ天城と一緒。天城を殺して舞い上がっちまって、そのまま金を持ち逃げしたんじゃねーの?」 「たしかに、その可能性も否定は出来ません」  イズミはそう言ってから、神楽に向き直った。 「――しかし、本当によろしいのですか? うちのメンバーの一人が仲間を殺し、逃げたという、ただそれだけのことです。わざわざ神楽様に協力していただくようなことでも……」  神楽は「ふっ」と微笑して答える。 「気にするな。私が好きでやっていることだ。長すぎる退屈を紛らわす……単なる暇潰しさ」 「そうですか……」 「それに、この殺人……見かけほど単純ではなさそうだぞ?」  イズミは驚いたようだった。 「というと……神楽様はこの事件に何か裏があると? ……まさか、先ほどの時点でそれに気がついていらしたのですか?」 「ああ。さっき見た写真だけでも疑惑を抱くには充分だった」  先ほど神楽はスケアクロウについてイズミへ報告するため、支部長室を訪ねていた。そのとき机に置かれていた事件現場の写真を数枚見て、神楽はイズミに詳しい資料を用意させたのだった。
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