第二章――――銃声

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「ほぼ答えは見えたが……もう一つ決め手となるものが欲しいな」  呟くように言うと、イズミを見上げた。 「ところで……イズミ。天城と秋水が担当していたという今晩の取引だが、相手はたしかコロンビア系の組織だったな?」 「はい。近頃こちらへ進出してきた、コロンビアマフィア傘下にある『テスカトリポカ』という二次組織です。フィリピン経由のルートで密輸された銃器の取引を行う予定でした。お渡しした写真の中に、テーブルの上に置かれたメモ用紙があったかと思いますが……」 「あのメモは、天城が取引の時間と場所を書いたものか」 「そうです。今夜十時、埠頭沿いにある亀山板金という廃工場の中で行う予定になっています」 「コロンビア、ね……」  神楽は小声で繰り返すと、今度は隣りに立つアキカワのほうを見て言った。 「お前はどうだ、アキ? 黙ってないで、たまには意見を聞かせろ。何か考えはあるか?」 「ははっ、そういやいたんだったな。お前」  ナツメが寝転がったまま笑う。 「アキカワ……」  イズミは小さく呟くと、アキカワを睨む。ナツメやカザマに対するそれとは明らかに違う、敵意の込められた視線だった。  アキカワは一瞬だけイズミと視線を合わせたが、すぐに無視する。少し考えてから、ゆっくりと低い声で話し始めた。 「……そうですね。俺には難しいことはわかりませんが……あの留守電は、気になりました」  神楽は面白そうに口の端を上げる。
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