第二章――――銃声

17/18
前へ
/79ページ
次へ
 イズミは困惑したような反応を返す。 「か……神楽様が? なにゆえ……」 「……面白いことを教えてやろうか。昨夜、スケアクロウのアジト襲撃の際に捕らえた男のことだ」  神楽は自分の鼻を指さして言う。 「その男は、鼻の頭が赤かった。ひどい鼻炎だったんだよ」 「は……はい……?」 「それにもう一つ。男の身体には首筋、腕などに引っ掻いたような傷跡が多数見受けられた。さて、ここまで聞いて何か思いつくことはないか?」 「鼻炎……そして首と腕に引っ掻いたような傷……? あっ、まさか……!」  イズミは驚いて息を呑む。 「コカインの使用兆候……!」 「そう。鼻からクスリを吸引するスニッフィングは、コカインの摂取方法として最も一般的なものだ。鼻の粘膜から直接摂取を繰り返すから鼻腔内炎症を起こす。一方の首や腕の傷跡は、蟻走感から自ら皮膚を引っ掻いたためにできたもの。コークバグと呼ばれるコカインの代表的中毒症状だな」 「それにしても、コカインとはまた……」 「ああ。日本に入ってくるものとしてはなかなか珍しいブツだ。捕らえた男が言うには、コカインの売人は最近知り合ったコロンビア人から仕入れたと話していたらしい」 「コロンビア人……」
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

138人が本棚に入れています
本棚に追加