第二章――――銃声

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 神楽は腕を組み、静かに笑みを浮かべる。 「最近になって現れたコカインをさばくコロンビア人。同じく最近夕桜へ進出してきたコロンビア系密輸組織の存在。偶然の符合にしては、出来すぎていると思わないか?」 「それら二つが関係している可能性は、かなり高そうですね……」 「そして先日の、リスト盗難の一件」  数日前に、伏王会夕桜支部からあるデータが何者かによって盗まれた。伏王会はナイツとの協定に伴う業務変更によって、数年前から薬物の取り扱いを中止している。盗まれたのは、その取り扱いを中止する以前に利用していた顧客リストである。 「おそらく、あのリストを盗んだのは天城だ」 「天城が……!?」 「これまでの情報から推測するに、その可能性が一番高い。天城はコロンビア人と手を組んでいたんだろう。しかし、夕桜支部内部でのリスト盗難が判明したことで、スパイの存在が疑われるようになった。天城がスパイとして捕まれば、自分たちとの繋がりを伏王会へバラすかもしれない……それをコロンビア人どもは危惧したんだ。リストを手に入れた以上、大した利用価値もないと判断したのだろう。奴らは天城を切り捨て、殺したのさ。自分たちの存在に感づかれないよう、回りくどい真似をしてな。不幸なことに、秋水はその巻き添えを食ったというわけだ」 「そんな、まさか……」  イズミは困惑を隠せない。だが態度を乱すことはなく、なんとか落ち着きを保ったまま神楽へ尋ねた。 「……しかし、神楽様。現場の状況とあの留守電を聞く限り、天城は秋水によって殺されたとしか思えません。あれがコロンビア人によって仕組まれたものだったとすると、私には何がどうなっているのかよくわからないのですが……」  神楽は愉快そうに喉を鳴らして笑う。 「……知りたいか?」
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