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女はつまらなそうに鼻で笑う。
「……ふん。まぁ、元より素直に認めるとは思っていなかった。――順番に話してやろう。貴様らの仕組んだトリックが、いかに杜撰で稚拙であったかということをな」
「はは、参ったねぇ。何を言っているのかよくわからないが……一応、聞かせてもらおうか?」
ジャケットの左胸ポケットに挟んでいたペンの頭を触りつつ、パブロは言った。
「まずはこれを聞いてもらおうか。天城が、うちのメンバーの一人、青鷺という男あてに残した留守電の音声だ」
女は上着からICレコーダーを取り出すと、音声を再生させる。
天城と秋水、二人の言い争い――そして銃声。
音声の再生が終わった直後に、パブロが言う。
「なるほど、今のやり取りを聞く限り……天城という男は殺されたようだな。もう一人のほう……秋水だっけ? そいつに」
「この音声だけを聞けば、そう感じるかもしれないな」
「ほぉ……違うというのか?」
「違うな。天城を殺したのは秋水じゃない」
「なぜわかる?」
「天城が殺されたのは、この電話の最中ではなかった。それは明らかだ」
パブロの眉がぴくりと動く。
「……どういうことだ?」
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