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「女……?」
白いカチューシャ、レースの付いたチョーカーとエプロン、膝丈のスカートに黒のニーソックス――メイド服を着た、黒髪ロングヘアの美人だった。体格は細身で小柄。かなり若く、成人しているようには見えない。
女がなぜここに? しかも、その恰好はなんだ? 長髪は軽く困惑しながら玄関の扉を開いた。
「ええっと……あんたは?」
尋ねると、相手は眩しいばかりの満面の笑みで答える。
「こんばんはっ! 『快楽天使』から来ました、ナツメでーす。今夜はよろしくね?」
「あ……? 快楽……? ナツメ……?」
「はい。……えっと、さきほどお電話、くださいましたよね?」
「で……デリヘルかよ? どっかと間違えてねぇか?」
「えー? そんなはずは……ここって聞かされてたんですけど、違いましたか?」
ナツメはメイド服のポケットから一枚のメモ用紙を取りだして、長髪に見せた。たしかに、ここの住所が書かれている。部屋の号数まで一致していた。
……部屋の誰かが頼んだのか? でも電話していたやつなんていなかったし、頼んだのなら俺が玄関へ行く前に教えたはずだ。俺が勝手に追い返しちまうかもしれねぇんだから。
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