第三章――――暴露

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 女はパブロをじっと見据えたまま、更に続ける。 「決定的な証拠もある。天城の頭を撃ち抜いた弾丸は.45ACP弾。秋水が持っていたコルト・ガバメントによって発砲されたものと思われるが、留守電に残っていた発砲音はそれとは明らかに違った。もっと小型の銃の発砲音だそうだ。この銃で天城が殺されたということはあり得ない」  発砲音の違い……まさかそんなところに目をつけるとは、予想外だった。しかし、まだこちらとの繋がりが証明されたわけじゃない。  パブロは未だ余裕の表情を崩さずに言った。 「なるほど。銃声という証拠を残してしまうとは、天城にとってその音声が記録されてしまったことは不幸だったな」 「たしかに、青鷺がかかってきた電話に応答せず留守電になったことは偶然だ。だが、現場の写真を見た瞬間から、私には天城の死に疑わしい点があるとわかっていた。もし電話の音声が残っていなかったとしても、その電話を受けた青鷺から証言を聞けさえすれば充分。銃声の違いという材料がなくとも、現場で何が起こったかを解き明かすことは容易かった」 「ほう? 疑わしい点というのは?」 「私が注目したのは、現場写真に写っていた天城の靴下だ。天城の死体の周囲は血に濡れていたが、靴下の足裏の部分にまで血液の付着した跡がべったりと残っていた」 「それのなにがおかしい?」
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